>LIONTARI ILION >>二人の獅子座(Leo)へ… 二人の獅子座(Leo)へ… ガランは、オレと同じ獅子座生まれだ。 毎年キチンと、オレの誕生会を開いてくれる律儀な奴でもある。 そんなアイツを喜ばせたくて、感謝の気持ちを伝えたくて。 「ガラン〜、今年はお前のバースデーパーティーやろうぜ」 って毎回言うんだけど 「私は従者の身に過ぎません」って、断られる。 「それでも」ってゴネるオレに 「アイオリア様、一体どなたが会の用意をして下さるのですか?」と グーの音も出ない返事をされてしまう。 でも、今年は違うぞー! エアが従者に加わった時には、アイツの誕生会をやったし、 準備だって………そこまで一人にやらせるのは、さすがに無理か…;;; 「私も…ガランさんのお誕生日をお祝いしたいです。 でも秘密のまま準備をするのは、とても難しいと思いますよ。 ガランさん、獅子宮のこと何から何まで分かっていますから」 エアの指摘した通り、ガランは獅子宮の全てを把握してる。 いくら備品が少ないとはいえ、コップ一つ持ち出そうものなら、 これこれ、こういうコップを見かけなかったか、尋ねられるのがオチだ。 「バースデーケーキを…作りましょうか?」 暫く考え込んでいたエアが、思いついたことを口にした。 「私の誕生会をして下さった時、出てきたケーキも手作りでした。 あれは、ガランさんが焼いて下さったのだと思います」 「ああ、オレの誕生日には、いつも焼いてくれる」 「となると材料は揃っているでしょうから、 あとはレシピが分かれば、私にも作れるかもしれません。 簡単なものなら、昔何度か作ったことがあるので」 甘いものが余り得意でないガランのために、 ココアではなくコーヒーの粉を利用したマーブルケーキを焼くことにした。 マーブル模様をつける時に、オレがメッセージを書き込む。 勘のいいガランのこと。隠れて作るのは絶対に無理だ。 今年のオレのバースデーケーキ担当に、エアが立候補して焼き時間を確保。 全てリハーサル無しの一発勝負になる。 「こんなギリギリの作戦でも、アイツの誕生日当日に決行するのは難しいか…」 「はい、残念ですが… アイオリア様のお誕生日に一緒にお祝い出来るように頑張ります」 「オレのケーキより、ガランの方を優先しろよ」 「そ、それはいくらなんでも…;;;」 ーーーそして8月16日 今年もまた、ガランはオレの好物を沢山作ってテーブルに出してくれた。 そしてエア作成の、ほんのり焦げた香りのケーキ。 「ごめんなさい〜(涙目)」 「いいよ、初めて作ったんだろ?半生よかマシさ」 まさかオレの分だけ、しっかり失敗するとは思わなかったけどな…。 食事を始めて暫くすると、ガランがエアに話しかけた。 「それで…『隠し企画』はどうなったんだい、エア?」 「そそそそれは…え〜と…(冷や汗)」 エアが助けを求める目でオレを見る。 どうやらガランに現場を見られていたらしい。 ええい、予定変更。今すぐ決行だ! 「エア、例のものを!」 「あ、ハイ!」 「「ガラン(さん)、(お)誕生日おめでとう(ございます)!!」」 オレ用のケーキとは違って、 美味しそうな焼き色のついたマーブルケーキをガランに押し付けた。 「………え?」 まさか自分のお祝いのことなんて、これっぽっちも考えていなかったのだろう。 あんなぽっかりと口を開けたアホ面ガランを見るのは初めてかもしれない。 「エア…。 『アイオリア様に喜んでもらうための隠し企画です』って言わなかったかい?」 「…ごめんなさい」 「お前に対しての『隠し企画』だ。 エアは別に嘘なんかついてないぞ!」 3名の主張が重なって、一時騒然となったお祝いの席だったが オレが「迷惑だったのか?」と尋ねると、ため息をついてから答えた。 「そんなこと思ったりしたら、私は女神からお叱りを受けてしまいます」 改めて、手渡されたケーキをしげしげと眺める。 そこには「誕生日おめでとう」の文字と、ガランの似顔絵が描いてある。 一瞬、表情が崩れたのをオレは見逃さなかった。 「あ、笑ったなー! どうせオレは絵が下手だよ〜」 「一所懸命さが伝わってきて、嬉しくて笑みがこぼれたんですよ」 そして、オレたち二人に丁寧にお礼を言うのだった。 でも………どんな言葉より、 その極上の微笑みが、何よりのご褒美だよ。 ーーーオレの「嬉しい」が、また一段と大きくなった誕生日。 [作成日:080816] 拍手頂けると嬉しいです お返事はGuest bookにて!
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